投資型クラウドファンディングはおすすめできる投資ではありません。
案件リスクの他に事業者リスクもあります。
早期償還が当たり前のため、募集時の利回りよりも低くなって、期待した利回りが得られることはほぼ無いです。
それでも投資したいという人のために、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングで厳選した事業者の選定、株式投資型クラウドファンディングの紹介をしたいと思います。
Contents
ソーシャルレンディング(融資型・貸付型クラウドファンディング)の厳選事業者
まず第一に、上場企業もしくはその子会社であることを最重要項目としたいと考えています。
上場企業だから安心ということはあり得ません。
でも、上場企業というのは取引所の審査や監査法人による監査を受けていて、一定の信頼性があると思いますので、この点は重視しようと思います。
次に、ケースは少ないですがファンドで遅延が発生した後の対応、そして情報開示の姿勢の順で評価します。
さて、各事業者を表にまとめましたのでご覧ください。
上場企業orその子会社が運営 | 遅延後の対応 | 情報開示 | 評価 | |
---|---|---|---|---|
SBIソーシャルレンディング | ○ | ○ | ○ | ○ |
SAMURAI | ○ | - | ○ | ○ |
J.LENDING | ○ | - | ○ | ○ |
OwnersBook | ○ | - | × | ○ |
COOL | ○ | - | ○ | ○ |
Funds | × | - | ○ | ○ |
クラウドバンク | × | - | ○ | △ |
CAMPFIRE Owners | × | - | ○ | × |
maneoファミリー | × | × | × | × |
クラウドクレジット | × | × | △ | × |
Nextshift Fund | × | - | △ | × |
Pocket funding | × | - | × | × |
LENDEX | × | - | △ | × |
○の評価となったのはSBIソーシャルレンディング、SAMURAI、J.LENDING、OwnersBook、COOL、Fundsの5つです。
SBIソーシャルレンディング
巨大金融グループのSBIホールディングス(8473)の子会社で、盤石な事業基盤です。
SBIソーシャルレンディングではSBISL不動産バイヤーズローンファンド16号など、デフォルト(貸し倒れ)となったファンドがあります。
貸付先の審査や担保評価などが適正だったのか疑問が残るところですが、デフォルト発生から任意売却、競売まではスピーディーだったと思います。
デフォルトは残念でしたが、maneoマーケットなんかとは違って、SBIソーシャルレンディングには資金回収能力があるということがわかった点は良かったのではないでしょうか。
SAMURAI
Nexus Bank(4764)の完全子会社、SAMURAI証券が運営しています。
Jトラストやあの日本保証と業務提携するなど、SAMURAIの運営に力を入れている状況です。
「Jトラスト株式会社及び株式会社日本保証との業務提携に関するお知らせ」
金融庁による匿名化の解除が発表された翌日、「貸付型クラウドファンディングにおける匿名化解除後の弊社の情報開示方針について」を発表し、情報開示に積極的な姿勢を見せています。
遅延となったファンドがないので資金回収能力については未知数ですが、日本保証の保証付きファンドが組成されて投資家の人気を集めるなど、Nexus Bankの努力が実を結び始めている印象です。
J.LENDING
JALCOホールディングス(6625)の完全子会社、ジャルコが運営するサービスです。
案件募集は半年に1回程度でしたが、JALCOホールディングスの2019年3月期の決算説明資料(P19)によると、「匿名化解除を受け、下半期以降、レンディングの組成・募集を加速させる予定」とのことです。
OwnersBook
東証マザーズ上場のロードスターキャピタル(3482)が運営しています。
2019年5月19日に「『OwnersBook』の貸付型案件における情報開示の方針について」を発表していますが、その後に募集されたファンドでも開示された情報は限定的。
他の事業者に比べると、情報開示に積極的とは言えません。
なお、OwnersBookは2019年7月5日、「[重要]江東区商業ビル第1号ファンド第1回 | 案件に関する状況報告」を公表。
貸付先企業の代表取締役個人の破産手続きが開始されたとのこと。
まだファンドの返済遅延までは至っていませんが、OwnersBook初のインシデントです。
COOL
東証マザーズ上場の株式会社ZUU(4387)の子会社が運営するサービスです。
1号ファンドが募集、償還された後にZUUの子会社になったため、実績は無いに等しい状況で、これからといったところです。
Funds
唯一Fundsだけが上場企業もしくはその子会社の運営ではありません。
これはFundsのスキームを考慮したためです。
一般的なソーシャルレンディンクのスキームは、ソーシャルレンディンク事業者がファンドを組成して集めた資金を貸し付けます。
そこには、ファンドを組成するソーシャルレンディンク事業者の事業者リスクが存在します。
みんなのクレジット、ラッキーバンク、トラストレンディングなどは、この事業者リスク満天の詐欺事業者でした。
それに対して、Fundsのスキームは上場企業やその関連会社がファンドを組成して、関連会社に貸し付けるものです。
ファンド組成者と借り手は同じ上場企業グループの会社です。
なので、投資家はファンドを組成する上場企業に資金を貸し付けているようなものです。
そのため、投資家が負う事業者リスクはFundsではなく、上場企業の事業者リスクです。
それは一般的なソーシャルレンディンクのスキームとは一線を画します。
微妙
クラウドバンク
微妙(△)評価クラウドバンクはソーシャルレンディング古参で、2013年にサービスを開始しています。
実績も豊富な業界大手です。
日本クラウド証券という証券会社が運営しています。
日本クラウド証券は、上場企業でもその子会社でもありません。
「一種業者(=証券会社)は二種業者より厳しい規制があってそれをクリアしている。だから二種業者より信頼できる。」
そんな風に言われていることもあります。
でも、本当にそうでしょうか?
JC証券という証券会社がありました。
このJC証券の親会社は、JCサービスという会社です。
そう、JCサービスはグリーンインフラレンディングの親会社です。
JC証券はグリーンインフラレンディングで集めた資金を政治家へ横流ししていました。
そして、金融庁に第一種事業者としての登録取り消しの行政処分を受けています。
ここまでひどいことはそうそう起きないと思いますが、一種業者(=証券会社)だからといって安心はできません。
日本クラウド証券は実績十分ですが、過去に2度の行政処分を受けています。
使わないことをおすすめ
maneoファミリー
過去の記事で何度も触れているmaneoファミリーです。
maneoファミリーは、maneoマーケットのプラットフォームを利用したサービスのことで、グリーンインフラレンディングやガイアファンディング、キャッシュフローファイナンスなどです。
投資家と借り手との間に、募集者であるmaneoマーケットと、営業者であるそれぞれの事業者の2社が入ることとなり、2社の間で全く連携が取れずに遅延が大量発生。
詐欺と言っても過言ではない状況となっています。
クラウドクレジット
クラウドクレジットについては「それでもクラウドクレジットで投資しますか?maneoと何が違うのか。」で詳しく説明しています。
担保の意味の無さ、資金回収能力の無さはmaneoと共通するものがあります。
Nextshift Fund
利回り低め、リスク高め、為替リスクもあり。
リスクとリターンが見合っていないと思います。
Pocket funding
非上場のソーシャルバンクZAIZENという会社が運営しています。
Pocket fundingのHPでは、グリーンインフラレンディング事件に係わったエスクローファイナンス株式会社が営業者として名前を連ねています。
また、金融庁による匿名化解除後も積極的な情報開示姿勢は見られません。
LENDEX
LENDEXは上場企業でもその子会社でもありません。
2019年に入って、LENDEXは代表者の変更を繰り返しています。
LENDEXで特筆すべき点は、設立から2019年2月まで代表者で、現在は管理部長を務めている筧悦生氏について、自身が設立した清和監査法人が2014年に金融庁から行政処分を受けていることです。
清和監査法人の運営が著しく不当という理由で業務改善命令の処分を受けています。
また、金融庁による匿名化解除後に、融資先公開として中国系不動産会社の情報を公開しました。
ですが、ファンド募集の際には匿名のままで、情報開示はされていません。
不動産投資型クラウドファンディングの厳選事業者
不動産クラファンはソーシャルレンディングとスキームが違うため、もともと金融庁による匿名化という闇は存在しませんでした。
なので、ソシャレンの評価ポイントとは少し変更しています。
まず1番のポイントは上場企業かその子会社かどうか。
この点はやはり重要です。
2つ目は、倒産隔離が図られているかどうかです。
もしも、事業者の他の事業がうまくいかずに倒産ということになった場合、投資家が出資したファンドにも影響が出ることが考えられます。
この影響が出ないような仕組みとすることが倒産隔離です。
なお、ソーシャルレンディングでは倒産隔離は図られていません。
3つ目は、出資者間で優先出資者と劣後出資者の別があるかどうかです。
事業者が劣後出資者となることで、優先出資者である投資家が出資した元本の安全性を高める仕組みです。
それでは、一覧表をご覧ください。
上場企業orその子会社が運営 | 倒産隔離 | 優先劣後 | 評価 | |
---|---|---|---|---|
bitREALTY | ○ | ○ | × | ◎ |
X-Crowd | ○ | × | ○ | ○ |
Jointo α | ○ | × | ○ | ○ |
RENOSY ASSET クラウドファンディング | ○ | × | ○ | ○ |
ASSECLI | × | × | ○ | △ |
CREAL | × | × | ○ | △ |
SYLA FUNDING | × | × | ○ | △ |
FANTAS fanding | × | × | ○ | △ |
LANDNET Funding | × | × | ○ | △ |
Crowd Realty | × | × | × | × |
ハロー!RENOVATION | × | × | × | × |
これらの事業者のうち、bitREALTYがGK-TKスキーム、Crowd Realtyが独自の子会社貸付スキーム、その他の事業者が不動産特定共同事業スキームを採用しています。
bitREALTY
ソーシャルレンディングも含めて、評価Max(◎)となったのはbitREALTYだけです。
ビットリアルティは、ケネディクスと野村総合研究所(4307)によって設立された会社です。
また、倒産隔離が図られている唯一の事業者となっています。
特別目的会社(SPC)を設立し、このSPC対象資産を移してビットリアルティ本体から切り離すことにより、対象資産以外から影響を受けることを防いでいます。
これによって、ケネディクスや野村総合研究所、ビットリアルティが倒産した場合のリスクを切り離しています。
X-Crowd
東証1部上場のインテリックス(8940)が運営しています。
優先劣後方式で、優先出資と劣後出資の割合は70:30です。
Jointo α
東証一部上場企業の穴吹興産(8928)が運営するサービスです。
優先出資の仕組みを採用しており、優先出資と劣後出資の割合は70:30となっています。
昭和39年設立の歴史ある上場企業が運営していること、劣後出資30%で高めということで高評価です。
RENOSY ASSETクラウドファンディング
東証マザーズ上場のGA technologies(3491)が運営しています。
GA technologiesは業績好調の不動産テックで、次々と新サービスや提携を発表して勢いに乗っています。
優先出資の仕組みを採用していて、優先出資と劣後出資の割合は70:30と高い割合になっています。
微妙
僕は非上場の不動産会社には良いイメージを持っていません。
FANTAS fundingで投資家登録してみました!
でも、投資はしないかな。不動産会社は簡単に飛ぶから。水戸大家さんとか、わひことか。
分配も毎月じゃなくて一括分配だし…。
不動産投資型クラウドファンディング事業「FANTAS funding」サービス開始! https://t.co/l1Tmv8YiAI @PRTIMES_JPさんから
— ハードロックマン@サラリーマン投資家 (@hardrockman_i) 2018年10月31日
というよりも、不動産業界自体に良いイメージがありません。
実際に不動産投資家として不動産業界に係わって、それは確信に変わっています。
不動産業界はブラックです。
なので、せめて不動産クラファンの運営会社は上場していてほしいというのが僕の評価ポイントです。
ASSECLI
非上場の不動産会社、プレミアムバリューバンクが運営しています。
「三為業者」として有名な会社です。
ファンドは優先出資が約8割、劣後出資が約2割となっています。
CREAL
ブリッジ・シー・キャピタルという非上場の不動産会社が運営しています。
優先劣後の割合は80~90:10~20と、ファンドによって割合が変わります。
ファンド募集時にはクリック合戦となり人気のようですが、非上場不動産会社のためおすすめできません。
SYLA FUNDING
非上場不動産会社の株式会社シーラが運営しています。
株式会社シーラ代表取締役の湯藤善行氏、その親会社の株式会社シーラホールディングス会長の杉本宏之氏はエスグラントコーポレーションという不動産会社を経営していました。
そしてその会社は民事再生法の適用を申請し、倒産しています。
FANTAS fanding
FANTAS technologyという非上場の不動産会社が運営しています。
優先劣後の割合は80:20です。
FANTAS technologyについては、2016年に「2年後上場」と言っていましたが、2019年になっても未だ上場せず。
また、いつの記事かわかりませんが、「3年以内に上場予定」という記事もあります。
LANDNET Funding
非上場不動産会社のランドネットが運営しています。
優先劣後の割合は70:30と劣後出資の割合が高く、ファンドの安全性が高められています。
1999年設立の会社なので、その辺の新興不動産会社よりは信頼できると思いますが、おすすめできません。
使わないことをおすすめ
Crowd Realty
運営は非上場のクラウドリアルティ株式会社、倒産隔離も優先出資の仕組みも採られていないためおすすめしません。
クラウドリアルティにはカブドットコム証券をはじめ、有名企業が株主に名前を連ねています。
これなら安心なのでしょうか?
あの毒ガエルことmaneoも有名企業から出資を受けていました。
しかし、結果はご存じのとおりです。
ハロー!RENOVATION
非上場の不動産会社、エンジョイワークスが運営しています。
投資型の案件も扱っていますが、リターンを求めるよりも、まちづくりに参加するということに重点を置いたサービスです。
理念に共感できる人は良いかもしれませんが、投資目的ではおすすめできません。
株式投資型クラウドファンディング(IFO)
ソーシャルレンディング(融資型・貸付型クラウドファンディング)、不動産投資型クラウドファンディングと見てきました。
投資型クラウドファンディングには、株式投資型クラウドファンディングというものもあります。
これは特別なコネクションなどがない一般の投資家でも、未上場企業に投資することができる仕組みです。
投資した未上場企業がIPOやM&Aなどでエグジットできれば、大きな利益を得られる可能性があります。
漢方生薬研究所という会社が、株式投資型クラウドファンディング初のエグジットとなりました。
株式投資型クラウドファンディングで漢方生薬研究所に投資していた人は、+50%の利益を得ることができました。
ですが、ハイリターンなものはハイリスク。
未上場企業は財務状況や事業基盤が不安定なところもあり、最悪の場合は倒産ということも十分に考えられます。
実際に、株式投資型クラウドファンディングを利用したブレスサービスという会社が倒産しています。
株式型クラファン専門家は次のように言っています。
既存のベンチャーファイナンスにどっぷり浸かってると株式投資型クラウドファンディングをVCの出資と同じに考えがちだけどが、そこは別物として考えた方がいい。
VCのような金銭リターンがメインではなくて、株式投資型は応援や共感がメインだと思ってる。— メカ@株式型クラファン専門家 (@ipomechanic) 2019年6月28日
「金銭リターンがメインではなくて、株式投資型は応援や共感がメイン」
僕はFUNDINNOとエメラダエクイティで数社に投資していますが、まだ企業を応援できる段階になく、金銭的なリターンを求めたいのでIFOには力を入れていません。
そんな株式投資型クラウドファンディングはまだ始まったばかり。
サービスを展開する各社を紹介したいと思います。
FUNDINNO
2017年にサービスを開始した、日本で初めての株式投資型クラウドファンディングです。
日本クラウドキャピタルという会社が運営しています。
現在まで70件以上の案件が募集されており、株式投資型クラウドファンディングでは圧倒的No.1の存在です。
第1号のエグジット案件も第1号の倒産案件も、このFUNDINNOから生まれています。
エメラダエクイティ
エメラダ株式会社が運営するエメラダエクイティ。
サービス開始当初は、FUNDINNOのライバルになると思っていましたが、急激にトーンダウンして数ヶ月は案件の募集はありませんでした。
そして2019年8月29日、ユニバーサルバンク株式会社への一部資産譲渡及び既存業務引継ぎを発表しました。
GoAngel
DANベンチャーキャピタルという会社が運営しています。
購入型クラウドファンディング大手の株式会社CAMPFIREが買収して、DANベンチャーキャピタルはCAMPFIREのグループ会社となりました。
UNICORN
2019年5月にAmazonギフト券プレゼントキャンペーンで話題になったUNICORNです。
2019年12月13日には「株式会社ZUUとの資本業務提携に関するお知らせ」を発表。
これによってUNICORNはZUU(4387)グループとなります。
投資型クラウドファンディングのまとめ
僕の失敗から言えることは、事業者選びがめちゃくちゃ大切だということです。
本当にこれは何度も声を大にして言いたい。
まず第一に事業者選び。
どこの事業者にしようか迷ってる人には、この記事の○がついた事業者で投資してほしいと思います。
ソーシャルレンディングの厳選事業者
- SBIソーシャルレンディング
- SAMURAI
- J.LENDING
- OwnersBook
- COOL
- Funds
不動産投資型クラウドファンディングの厳選事業者
- bitREALTY
- X-Crowd
- Jointo α
- RENOSY ASSETクラウドファンディング