FUNDINNOやユニコーンなどの株式投資型クラウドファンディングで投資した場合のエンジェル税制について、個人投資家目線で解説したいと思います。
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エンジェル税制とは
エンジェル税制とは、一定の要件を満たす未上場のベンチャー企業に投資をしたら、投資時点と売却時点で税金を優遇して、ベンチャー企業への投資を促す制度です。
投資家からすると、ベンチャー企業に投資した上で節税ができるありがたい制度ですね。
投資時点の優遇措置
投資時点の優遇措置はAとBの2種類あり、投資先のベンチャー企業の状況によって受けられる優遇措置が異なります。
優遇措置 | ベンチャー企業 |
---|---|
A | 設立5年未満 |
B | 設立10年未満 |
優遇措置Aの要件を満たす場合は、投資家がAかBかを選択することができます。
この優遇措置を受けるには、投資した年の12月31日時点で株式を保有していることが必要な条件です。
また、この優遇措置は所得税のみ適用になります。
住民税は投資時点の優遇措置は適用外です。
優遇措置A
優遇措置Aの内容は下記のとおりです。
- 投資額(上限1,000万円)-2千円を投資した年の所得金額から控除
- 控除上限額は、投資額(上限1,000万円)と総所得金額等✕40%のどちらか低い方-2千円
優遇措置Aは、所得控除の中の寄附金控除に該当します。
総所得金額等は、給与所得などの総合課税となる所得に申告分離課税の所得を加えたものです。
総合課税や申告分離課税については「所得の種類は10種類。課税方法の違いやマイナス時の損益通算についても解説!」で詳しく説明しています。
なお、令和3年1月1日以降は、上限が1,000万円から800万円に引き下げられる予定です。
優遇措置B
優遇措置Bの内容は下記のとおりです。
- 投資額全額を投資した年の他の株式譲渡益から控除
- 控除上限なし
株式の売買で利益が出ている場合は、投資額全額を差し引くことができます。
他の株式譲渡益がベンチャー企業への投資額よりも低いときは、他の株式譲渡益が控除額となります。
売却時点の優遇措置
ベンチャー企業の株式を売却して損失が出た場合、売却した年の他の株式譲渡益と損益通算が可能です。
損益通算しきれなかった損失は、以後3年にわたって繰越が可能です。
これは通常の未上場株式への投資では認められていません。
残念ながら、投資したベンチャー企業が破産や解散をしたときも同様に、他の株式譲渡益と損益通算しきれなかった損失は、以後3年にわたって繰越が可能です。
また、この売却時の優遇措置は住民税も対象です。
なお、ベンチャー企業へ投資した年に優遇措置AまたはBの適用を受けた場合は、その優遇措置で控除された金額を取得価格から差し引いて損失計算をします。
投資したときに優遇した分は、二重に優遇はしないよということですね。
住民税は投資した年に優遇措置はないため、差し引くのは所得税のみです。
投資家の要件
エンジェル税制は、ベンチャー企業の新規発行株式を金銭の払込により取得した個人が対象です。
発行済みの株式を金銭の払込により取得した場合は対象外です。
新規発行株式でも、金銭の払込によらない場合は対象外となります。
そして、新規発行株式を取得した場合が対象なので、新株予約権(ストックオプション)は取得時点では対象になりません。
権利を行使して、金銭を払い込んで株式を取得した年に対象になります。
FUNDINNO型新株予約権はエンジェル税制の対象外
FUNDINNOでは株式の他に新株予約権への投資も可能です。
このFUNDINNO型新株予約権ですが、エンジェル税制の対象外とのことです。
具体的に見てみます。
まず、投資時点についてです。
投資時点では、金銭の払込により新株予約権を取得します。
エンジェル税制の要件は、株式の取得のため、投資時点では対象外です。
では、権利行使時点はどうでしょうか?
一般的な新株予約権の場合、権利行使時点には金銭の払込により株式を取得します。
エンジェル税制の要件を満たしますので、権利行使時点に対象となります。
これに対して、FUNDINNO型新株予約権では、投資先企業がIPO、M&A、解散となった場合、金銭の払込は生じません。
そのため、この場合も対象外です。
IPO、M&A、解散のいずれも発生せず、権利行使期間の7年を経過するときは金銭を払い込むことにより株式を取得することができます。
この株式取得のためにする金銭の払込は、エンジェル税制の対象になると考えます。
ですが、FUNDINNOの取引例では40万円投資してたった40円です。
無に等しいです。
エンジェル税制の確定申告
ここからはエンジェル税制の確定申告についてご紹介します。
確定申告書等作成コーナーで作成できるか?
エンジェル税制の確定申告は、一部の場合を除いて国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成可能です。
国税庁のHPによると、確定申告書等作成コーナーで作成できないのは、下記に該当する場合です。
下から2番目は、平成20年4月30日までに株式を取得した場合の規定なので、説明は省きます。
それぞれがどんな場合か見てみると、
- ベンチャー企業の破産や解散により損失を計上する場合
- ベンチャー企業が破産や解散をしたことや、株式を未上場株として売却したことによる損失を、上場株式等の譲渡所得等と損益通算する場合
- 損益通算しきれなかった損失を翌年以降に繰り越す場合
- 優遇措置Aの適用を受ける場合
優遇措置B以外全部です!!
ということで、確定申告書等作成コーナーで作成できるのは、優遇措置Bの適用を受けるときのみです。
ただ、優遇措置Aも投資額1,000万円以下であれば、確定申告書の作成だけならできないことはないです。
まわりくどい言い方になってしまいましたが、投資額1,000万円以下であれば確定申告書等作成コーナーで確定申告書の作成ができます。
でも、国税庁の公式見解は作成不可ですのでご注意ください。
後ほどご説明する必要な添付書類である「特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書」と「特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書」は確定申告書等作成コーナーでは作成できないため、この2つの明細書は投資家自身で作る必要があります。
優遇措置Aの場合、確定申告書等作成コーナーでは投資額上限1,000万円の計算はできません。
1,000万円を超える寄附金額を入力しても通常の寄附金控除と同様に計算されてしまいます。
なので、総所得金額等が2,500万円以上で1,000万円を超える投資をした人は確定申告書等作成コーナーでは確定申告書を作成することはできません。
確定申告に必要な添付書類
エンジェル税制適用のための確定申告書に添付する書類は、優遇措置ごとに異なります。
必要な添付書類は表のとおりです。
必要書類 | 投資時点 | 売却時点 | 破産や解散 | 入手先 | |
---|---|---|---|---|---|
優遇措置A | 優遇措置B | ||||
都道府県の確認書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ベンチャー企業 |
個人が一定の株主に該当しない旨の確認書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ベンチャー企業 |
株式投資契約書の写し | ○ | ○ | ○ | ○ | ベンチャー企業 |
株式異動状況明細書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ベンチャー企業 |
証券会社から交付を受けた取引報告書又は発行会社から交付を受けた買付通知書 | × | × | ○ | × | 証券会社又は ベンチャー企業 |
清算結了の登記事項証明書、破産手続開始の決定の公告等 | × | × | × | ○ | |
株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書 | × | ○ | × | × | 税務署 |
株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書(特定権利行使株式及び特定投資株式分がある場合) | × | × | ○ | ○ | 税務署 |
特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書 | ○ | ○ | × | × | 税務署 |
令和_年分の所得税の確定申告書付表(特定投資株式に係る譲渡損失の繰越控除用) | × | × | ○ | ○ | 税務署 |
特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書 | ○ | × | × | × | 税務署 |
東京都産業労働局HPを参考に作成
出てくる用語ですが、優遇措置Aの要件を満たすベンチャー企業を「特定新規中小会社」、その株式を「特定新規株式」、優遇措置Bの要件を満たすベンチャー企業を「特定中小会社」、その株式を「特定株式」と呼んでいます。
このように必要書類がたくさんあるので、漏れがないようにしっかり確認しましょう。
優遇措置Bで必要な「株式等に係る譲渡所得税等の金額計算明細書」と「特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書」は、確定申告書等作成コーナーで作成することができます。
e-TAXの場合は、作成した書類を電子送信することが可能です。
e-TAXを使わない人も、確定申告書等作成コーナーで作った書類をプリントアウトして使用することができます。
「都道府県の確認書」などのベンチャー企業が交付する必要書類はイメージデータにより提出可能な添付書類として認められていないため、イメージデータでの提出はできません。
e-TAXの場合でも、申告書を電子送信した後に「申告書等送信票(兼送付書)」を印刷して、必要書類と一緒に税務署に提出しなければなりません。
優遇措置Aでは、先ほども触れましたが、「特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書」と「特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書」が必要です。
これらは確定申告書等作成コーナーでは作成できないため、投資家自身で作成しなければなりません。
上記リンクは国税庁HPですので、各書類はリンク先からダウンロードしてご利用いただけます。
「特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書」は、確定申告書と「特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書」から数値を転記する箇所がありますので、
確定申告書
↓
特定(新規)中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除の明細書
↓
特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書
この順番で作成することをおすすめします。
エンジェル税制のまとめ
以上がエンジェル税制についての解説になります。
エンジェル税制はマイナーで、税務署の人もよくわからないことも多いようです。
ハードロックマンの記事じゃわからないよって方は、中小企業庁のHPもご覧ください。
目指せエンジェル投資家!!
お読みいただき、ありがとうございました!
※税金についての詳しい内容は、市区町村や税務署、税理士にお聞きください。