2021年4月2日に判明したスターウッド・キャピタル・グループによるインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298)へのTOB計画、そして4月6日に開始されたTOB。
その結果が6月16日に判明しました。
結果は「不成立」。
買付予定数の下限3,877,247口に対して、応募投資口の総数は348,378口で、下限の10%にも満たない結果となりました。
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スターウッド・キャピタルによるTOB計画判明から不成立までの経緯
「J-REIT敵対的買収?インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298)へのTOB計画が判明!インベスコはどうする?」でお伝えしたとおり、4月2日にスターウッド・キャピタルが提出した大量保有報告書によりTOB計画が判明しました。
そこからTOB不成立に至るまでの経緯を振り返ってみたいと思います。
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は「留保」の意見表明。TOB期間の延長要請と質問
TOB計画の判明を受けて、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は4月15日、「留保」の意見を表明するとともに、TOB期間を60営業日へ延長することを要請し、今回のTOB及び投資口のスクイーズアウトが強圧性を有することへの質問をスターウッド・キャピタルに対して行いました。
「スターウッド・キャピタル・グループによる本投資法人投資口に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ」
「スターウッド・キャピタル・グループによる本投資法人投資口に対する公開買付けの期間延長の要請に関するお知らせ」
それに対して、スターウッド・キャピタルはTOB期間の延長には応じず、今回のスキームの正当性を主張しています。
「スターウッド・キャピタル・グループ、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人による本公開買付けに関する意見に回答」
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人激おこ。「反対」の意見表明と対抗買付けの要請
スターウッド・キャピタルの対応に激おこぷんぷん丸のインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は5月6日、ついに「反対」の意見表明を行いました。
「スターウッド・キャピタル・グループによる本投資法人投資口に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ」
さらにスターウッド・キャピタルのTOBに対抗するため、インベスコ・グループのインベスコ・インベストメンツ(バミューダ)リミテッドに市場買付け等による投資口の買付け要請を行います。
この要請に応えて、インベスコ・インベストメンツ(バミューダ)リミテッドは6月14日までに投資口の7.10%に当たる624,651口を取得しています。
一方のスターウッド・キャピタルはこれに対抗するため、5月10日にTOB価格を当初の1口20,000円から21,750円へ引き上げています。
「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の投資口を対象とした公開買付けの買付条件等の変更に関するお知らせ」
インベスコ・グループによるTOB提案書。激おこのスターウッド・キャピタル
5月20日、インベスコ・グループのIRE (Cayman)Limited(インベスコ・リアルエステート)がインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人にTOB提案書を提出。
その提案書によると、発行済投資口の全ての取得を目的とし、投資口全てを取得できなかった場合には、投資口併合によりスクイーズアウトを行うこと。
6月初旬から中旬に期間を30営業日として開始することを予定し、TOB価格は1口22,500円とするものでした。
「IRE (Cayman) Limitedによる公開買付けの実施に関する提案書受領のお知らせ」
この提案書を受けて、今度はスターウッド・キャピタルが激おこぷんぷん丸なリリースを発表しました。
「スターウッド・キャピタル・グループ、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人による不明瞭な開示、信頼性の低い対抗TOBの実施の「意図」の表明について疑問を呈する」
タイトルだけでもスターウッド・キャピタルが怒っているのが伝わってきます。
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人が批判してきたTOB及びスクイーズアウトと同じスキームをインベスコ自らが提案しているわけですから、スターウッド・キャピタルの気持ちもわかります。
スターウッド・キャピタルはTOB期間を延長、TOB価格を引き上げるも…
スターウッド・キャピタルは5月24日、当初は5月24日までの30営業日としていたTOB期間を6月15日までの46営業日に延長しました。
「スターウッド・キャピタル・グループ、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の投資口を対象とした公開買付けの期間を6月15日まで延長」
6月1日には21,750円としていたTOB価格を22,500円に引き上げ、さらに買付予定数の下限を発行済投資口総口数の50%に引下げました。
「インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の投資口を対象とした公開買付けの買付価格の引上げ等に関するお知らせ」
これに対してインベスコ・リアルエステートは、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人に対して修正提案書を提出。
その内容は、6⽉18⽇にTOB期間を26営業⽇として開始することを予定しており、TOB価格は1⼝22,750円とし、買付予定数の下限を発⾏済投資⼝の54.10%とすることを予定しているというものでした。
「IRE (Cayman) Limitedによる公開買付けの実施に関する修正提案書受領のお知らせ」
これを受けたスターウッド・キャピタルの反応が注目されましたが、TOBは6月15日に終了し、冒頭で触れたとおり予定数の10%にも満たずに不成立となっています。
インベスコ側は実際にTOBをすることなく、「提案書」という形のみで窮地を乗り切ったことになります。
スターウッド・キャピタルの運用資産は750億ドル、対するインベスコ・グループの運用資産は1兆4,041億ドル、不動産運用部門であるインベスコ・リアルエステートの運用資産だけでも832億ドルですので、両者の規模は桁違いのため無理なTOBだったのでしょうか。
インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人の今後はどうなる?
さて、一先ずスターウッド・キャピタルのTOBを回避できたインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人ですが、今後はどうなるのでしょうか?
インベスコ・リアルエステートの提案書によると、6⽉18⽇に1⼝22,750円でTOBを開始し、投資口全てを取得できなかった場合は、投資口併合によるスクイーズアウトを行うとしています。
これが実施されてTOBが成立すると、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は非公開化されることとなります。
スターウッド・キャピタルのTOB不成立を受けた6月16日のリリースでは、「本投資法人の価値ないし投資主の共同の利益の最⼤化の観点から、引き続き、修正提案について真摯に検討して参ります。」としています。
「スターウッド・キャピタル・グループによる本投資法人投資口に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」
敵対的TOBを回避したことで、インベスコ・リアルエステートによるTOBは行わず、引き続き東証に上場し続けるのか。
それとも、もうこんなことは御免だということでTOB提案書のとおり非公開化するのか。
インベスコの今後に注目です。
J-REITの更なる普及を願う僕としては、個人的には引き続き上場を維持してほしいところですが果たして…!
続報:インベスコが提案書のとおりTOBを実施!
6月17日、インベスコ・グループが提案書のとおりインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人へのTOBを実施すると発表しました。
「IRE IOJ合同会社及びMAR IOJ合同会社によるインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人投資口(コード番号:3298)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
インベスコ・グループは投資口の全てを取得・所有し、最終的にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人を非公開化することを目的として、TOB価格22,750円で発行済投資口数の54.1%にあたる4,761,794口、インベスコ・リアルエステートが所有する7.1%を除くと、発行済投資口数の47.0%にあたる4,137,143口を下限としています。
TOB期間は6月18日から7月27日までの26営業日です。
下限を超える応募がありTOBが成立したものの、投資口の全てを取得できなかった場合は、投資口の全てを取得するために投資口併合によるスクイーズアウトを行うとのことです。
これと同時にインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人は、このTOBに「賛同」の意見を表明しています。
「インベスコ・グループによる本投資法人投資口に対する公開買付けに関する意見表明(賛同)のお知らせ」
スターウッド・キャピタルのTOBでは、公開買付代理人が三田証券、復代理人がマネックス証券だったのに対して、インベスコ・グループのTOBは大手のSMBC日興証券ですので、スターウッド・キャピタルのときよりは集まりそうな感じです。
J-REITが上場廃止になってしまうのは残念ですが、「応募総数が総数が買付予定数の下限に満たない場合は、応募投資口の全部の買付け等を行いません。」とのことなので、47%の応募がなくTOB不成立となることを願っています。